このドームもまた見たことのない奇怪な形をしている。
土手を緩やかに下り、土煙を巻き上げながら川岸へ降りていく。
これ以上ないくらい晴れ渡った空を眺めながら、
今回は本当に天気に恵まれていると実感した。
デコボコ道を白いバンが飛び跳ねながら進む。橋の下の手前の駐車場についた。
原っぱに車がたくさん止まっていて、いたるところに小さめの宿泊用テントが張っている。いかにもロハスな雰囲気を醸し出しているミュージシャンたちが民族楽器を楽しそうに演奏している。
その演奏を聴きながら風を感じていると、車はまた土手を上り始めた。どうやらステージ出演者は橋の反対に行かなければならなかったらしい。
反対側について、車から降りる。16:30くらいだったと思う。足柄からまさか明るいうちに『橋の下』に来れたという今の事実がまだ現実として飲み込めていない。日が傾いてきて土手は少しだけ赤くなり始めていた。ステージの演奏も人々のざわめきも遠くで聞こえる。祭りのあの独特な怪しい雰囲気が、私を白昼夢の中にいるような錯覚にさせた。
「私、T字路s絶対みたい!間に合うかなぁ。」と車内で話していた女性ミュージシャンが、着くや否やステージに走っていった。もう一台の車から出てきた人たちが「あ、ヒッチハイクの!?こんにちは!」と気さくに声をかけてくれた。そして今日一緒に神様の模型を操作する方々に挨拶をした。「いやー本当に助かるよ!よろしくね!じゃぁ1時間半後にここに戻ってきてね」といわれたので倫太郎と『橋の下』をウロウロすることにした。
金曜から3日間開催される『橋の下音楽祭』。ボランティアスタッフで運営しており、入場無料の投げ銭ライブ。「和」のイメージで統一された会場には着物やはっぴをきたスタッフや子連れ狼に出てくる乳母車に乗せられた子どもなどがいた。
電力は太陽光発電で賄っていおり、会場のいたるところに太陽光パネルが設置されていた。
橋の下という立地をうまく活用して、古き日本のノスタルジーと野外フェスの開放感が融合した不思議な空間を作り出していた。
ステージではT字路sが演奏している。「ぬ湯」と書かれた下町ステージの内装は銭湯になっていてとても斬新なデザインだった。
沖縄でたまにライブしていたことは知っていたが実際に見たのは初めてだった。一度聞いたら忘れないvo.イトウさんのしゃがれ声が橋の下にバリバリと響き渡る。会場の雰囲気によく合っていた。
ステージ後方にタイムテーブルがあった。
すぐにトリ(最後の出演バンド)の名前を確認した。私たちはここで初めて、自分たちを乗せてくれた方々が「白崎映美&とうほぐまづりオールスターズ」であることを知った。
でもどんなジャンルの音楽なのかは分からないままだった。
倫太郎が見たいと言っていた「タテタカコ」がちょうどこの後始まる。このタイミングの良さはなんなのだろう。倫太郎はとても喜んでいた。桜坂アサイラムで歌声に感動したらしい。タテタカコを観るために草原ステージに向かった。
草原ステージは、橋の真下からは少し離れた芝生地帯に設置されている。小さなテントがポツリポツリと張られ出店もまばら。夜になると美しく光るであろう手作りの竹灯篭がステージ周辺に立てられている。
木の下に組まれたステージは自然と一体化していた。タテタカコの幻想的な歌声は西日になりつつある太陽と調和して、私をさらに深い夢の中へ誘(いざな)ってくれた。この人はとっても心優しい人なんだろうなぁって歌声から伝わってきた。
倫太郎も私も芝生の上に寝転がった。
そして何をするでもなく、ただぼーっと、空を見上げた。
空気が澄んでいた。
あぁなんて平和なんだろう。
なんて幸せなんだろう。
つづく
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