2017年1月24日火曜日

お葬式7

棺桶が閉じられて式が終わると、
我々は上着を羽織って外に出た。

私とモッくんとスタッフで、
棺桶を霊柩車に運び入れる。

霊柩車は、おばぁちゃんが長年くらしたマンションの前を通って、火葬場へ向かった。10分ほどで着いた。

霊感など微塵もない私だが、やはり火葬場は異様な空気が漂っていた。万物の色彩がズルリと抜け落ちたような風景。色を無くした風が冷たく墓地に吹き抜けていた。

炉が一列に並んでいる。
壁の向こうでは業火がバチバチとうねっているだろうに、この広いフロアは静かだ。

「ひまわり」と書かれた炉の前に棺桶が運ばれた。お上人さんも一緒に来てくれて、お経を上げてくれた。

たしか私の父が亡くなったとき、赤い着火ボタンを喪主の私が押したような記憶があったが、今回はそのようなことはしなかった。

炉に棺桶が入れられ焼かれる間、我々は1度葬儀場に戻った。

待合室で親戚一同と弁当を食べた。弁当といってもさすが高級葬儀場。鮭の西京漬、温野菜、刺身、美味しすぎて驚いた。


15:40
再び火葬場に戻る。炉の中から、先ほどまで人間の形をしていたおばぁちゃんが、跡形もなく消えていた。綺麗な花も、死装束の水色の着物も、布張りの棺桶も何もかもなくなっていた。代わりに、白いカケラがバラバラに置かれていた。

箸が配られ、焼き場の人が説明してくれる。この人も目にアイシャドウをたっぷり塗っているみたいな、ひどい顔色だ。




「まず、これが喉仏ですね。仏様が手を合わせているような形をしています。」







本当だ。仏様が両手を合わせて、祈っているように見える・・・すごい。大昔の人もこの形をみて「仏様だ」と驚いたのだろう。どんなに時代が変わっても共感できることってあるんだなぁと思った。








「ほんまやぁ・・・」と一同感動した。




「本骨」と呼ばれる小さな骨壷に喉仏を入れる。これは西宮のおばちゃんが慎重に行った。






次に「胴骨」と呼ばれる大きい骨壷に、身体の骨をみんなで入れていく。








「胴骨に全ての骨は入りません。足の方から徐々に入れていきましょう」








慣れた様子で骨の説明をしてくれる。







「これはカカトの骨ですね」







「これはどこの部分?これは?これはどこの部分?」








西宮のおばちゃんの登場だ。








「これは、膝のところですね」








「え?これは?これはどこの部分?これは?」







「これは、そうですね・・・これも膝のところですね」







「これは?これはどこの部分?これは、どこの部分?」







そんなにどこの部分か気になるのか!!!とツッコミたくなるくらいしつこく聞いていた。「焼肉屋にいる、肉にうるさい客」みたいな言い方やめてくれ。





結局収まりきれないくらいパンパンに骨を入れたので、蓋でギュッギュッと押し潰した。




別室にいき、2つの骨壷を白い風呂敷で包む。「本骨の中の喉仏が倒れないように慎重に包んでください」と西宮のおばちゃんが係の人にいっていたけど「そんなん無理やろ。どうせ運ぶんやし倒れるで。」とキヨちゃんがすかさず、みんなの思っていたことをツッコんでくれた。キヨちゃんは我々の代弁者であり、この場での救世主だ。



つづく


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