2017年1月16日月曜日

お葬式3


1月13日
西宮のおばちゃんの「車の鍵がない」というリフレインで目が覚めた。結局本人のカバンの中にあった。

朝食をお願いされたので、なか卯の親子丼を買ってきた。私はこれが大好きだ。

14:30
私のいとこのモッくんが東京から新幹線で来てくれた。最後に会ったのは思い出せないくらい前だ。私の5個上。すぐに気兼ねなく話せるようになった。

通夜の前に、西宮駅近くのドンキホーテ内の100均で黒ネクタイを買い、一階の宮本むなしで腹ごしらえ。
モッくんごちそうしてくれた。ありがとう!美味しかった!

通夜が始まる時間が近づくと、親戚が続々と集まってきた。

初めてお目にかかるおばぁちゃん側の親戚。1人、また1人と入ってくる。その度に「孫の宗孝です。」と挨拶する。

しかし、大変だったのは、親戚のほとんどが高齢の女性で、同じようなサイズ感と雰囲気なのだ。シルエットで当てろといわれたら絶対に不可能だ。
名前も必ず最後に「子」が付く似たような名前なのでややこしい。

キヨ子さん(以下キヨちゃん)とサチ子さん(以下サッちゃん)は姉妹で、おばぁちゃんからみると姪にあたる。キヨ子さんは88歳で出席者の中では最高齢。この人ずっとしゃべってるし、会話の返しも早い。そして面白い。キヨちゃんがこの後、我々を苦しめるとは想像もしていなかった・・・。

18:00
通夜が始まった。

1列目に、喪主の西宮のおばちゃん、モッくん、私。

2列目に、キヨちゃん、サッちゃん他親戚一同。

事前に西宮のおばちゃんがどうしても読経の前に「おかぁちゃんの最後の様子を伝えたい」と言っていたので、全員揃ったタイミングで、おばちゃんが前に出てきた。

涙をボロボロ流しながら、おばちゃんがどれだけ素晴らしい死に際だったかを支離滅裂になりながらも一生懸命話し始めた。

BGMでは、「千の風になって」のピアノバラードが流れている。参列者は真剣な眼差しで西宮のおばちゃんの話を聞いている。


3分くらい経ったところだった。後ろの方から何やらごにょごにょ声が聞こえることに気づいた。キヨちゃんの声だ。

「葬儀屋が言うこと全部ゆうてしもてるやん」「もうそのへんにしとき」「長い長い」

キヨちゃんが淡々とツッコミを入れる。

目の前では、感極まって泣きながら西宮のおばちゃんが話しているのに、キヨちゃんの副音声がすぐ後ろから絶えず聞こえてくる。

私とモッくんにとって「絶対に笑ってはいけない葬式24時」のスタートだ。

延々と続くキヨちゃんのツッコミに気づいた西宮のおばちゃんは一度話を止め「あ、(私の話は)いらない?いりませんか?」と少しキツめにキヨちゃんに問い詰めた。キヨちゃんは「いや〜」とお茶を濁した様子だった。
西宮のおばちゃんは何事もなかったかのように、すぐにまた涙を流しながら話し始め、キヨちゃんのツッコミもすぐ始まる。

6分くらいで終わった。なんとか笑わずに絶えた。

お上人さん(おしょうにんさん)が入ってきて、読経(どきょう)が始まった。松野家は代々日蓮宗で、今津の寺のお上人さんにお世話になっているらしい。

このお上人さんもかなり高齢で、時々お経が途絶えたり、咳き込んだりするので内心、大丈夫なのだろうかと心配になる。

読経の間、参列者は順に焼香をあげる。この間も姉妹は喋り続ける。

「あら、あんたタイツ破けてんで〜」
「え、どこや」
「ほらここや、ここ」
「ほんまや〜」

うつむいて悲しみにふけるフリをして、笑いをこらえた。

30分ほどで読経は終わった。
なんとか乗り切った・・・。

親戚のおばちゃんたちを車で送迎しようと、入り口まで車をまわして待機していると、外でもめている。

親戚のおばちゃんたちは遠慮してタクシーで帰ると言い、西宮のおばちゃんは車で送迎すると言い、押し問答になっている。

しまいには、西宮のおばちゃんがマジギレして「もう!!ゆうこときいて〜!ほんまに!!私のゆうこときいて!!」といい、管を巻くおばちゃんたちの腕を強く掴んで強引に車に押し込んだ。

なぜここでそんなにあらぶるのか。
その様子を見て、私とモッくんはゲラゲラ笑ってしまった。

デデーッ!!
松野ーモッくんーOUTー!!


つづく




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