2014年5月12日月曜日

『薄氷の浪人』

我々は薄氷の上を歩くように
生きている。
日々当たり前のようにメシを食い、
仕事にいき、酒を飲み、友と言葉を交わし、
死の存在が程遠い世界で生活している。
しかしなんのことはない、
たまたまそこが出来損ないの氷で、
運悪く割れてしまって、
凍てつく海に落ちてしまったとき、
死に値する寒さの中で、
人は初めて「命の儚さ」を、
身を持って知る。

自分が当たり前のように、
普通に生き続けられる保証なんてどこにもない。
明日交通事故にあって、
二度とスーパーの上の段に手が届かない身体になってしまうかもしれない。
明日身体を患って、
二度とみんなとバカみたいな飲み会が出来ない身体になってしまうかもしれない。
日常生活の惰性が引き起こす麻痺が生み出す「永遠」は蜃気楼にすぎない。
生を感じられないとは、
死を感じられないこと。
「ただ漠然とした不安」は、
自分自身が作り出した虚像。

だからこそ毎日毎日楽しんで、
明日はもっと楽しんで、
もし氷が割れて落ちたときには、
首まで浸かりながら、
言ってやったらいい。
「いい湯だなぁ!」って。
それが最期の言葉なら、
まったく悔いはない。

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