2014年3月14日金曜日

『日本映画界の救世主、変態仮面!』の巻

まぎれもなく今年のぶっちぎりの暫定一位であり、
私が求めているものが詰まった映画。
『HK/変態仮面』


原作は少年ジャンプで連載されたあんど慶周氏の「究極!!変態仮面」。
ストーリー冒頭の片瀬那奈扮するSM嬢のツカミで心を引きつける。
説明的になりがちな序盤も、
笑いを上手く挟みながら流れるように進むので観ていて気持ちいい。
中盤からは、
ありえないだろうという展開や表現をも超越した
「圧倒的な馬鹿馬鹿しさ」が物語を飲み込みそのまま一気にエンディングへ。
こんなにも真面目にアホなことをやれるメジャー映画が
この現代日本に生まれ落ちたことを奇跡に思う。

というのも、この手のコメディタッチのマンガ原作の題材は、
実写映画化されたとしてもものすごく低予算で製作され、
短館上映で終わる、もしくは
DVDストレート(劇場公開されずDVDのみでの公開)で流通してしまうものが多い。

しかし、この『変態仮面』の映像は、
お金がかかっているので見応えがある。
いま旬な監督がメガホンを取り、
有名な役者が多数出演している。

ハリウッドなら一年に何本も
「お金のかかったオバカな映画」は山ほど作られているが、
倫理とか秩序とか教育とか色々規制が厳しい日本の、
現代の映画不況時代に、
お金をかけてた変態のヒーロー映画の
企画が通り
撮影できたことに感心した。

キャストが、特に主要キャストが、
素晴らしくハマっていた。
小栗旬が「変態仮面は鈴木亮平以外考えられない」と語っていた所以も
作品を観てうなずいた。


主演の鈴木亮平は、
原作の変態仮面のたくましい身体に近づけるため、
体重を15kg増量し、肉体改造を行った。
その筋肉造形の美しさとコスチュームとのGAPが
忠実に具現化されているので、
ポーズを決めるだけでとても説得力のある画になる。



ヒロインには清水富美加。
『仮面ライダーフォーゼ』の城島ユウキ役で人気を博した女優が、
同じ仮面は仮面でもかなりジャンルが違う路線のヒロインに挑戦。
「変態仮面のヒロイン」という誰もやったことのない役だが、
そんなの関係ないって感じで、持ち前の天真爛漫さを全面に打ち出していた。
ぶれない「清楚な正統派ヒロインキャラ」が物語において嫌味なく調和している。


『水曜どうでしょう』や『SPEC』で御馴染みの役者、
安田顕がニセ変態仮面を演じているのだが、
このキャスティングも見事だった。
変態仮面になりすまし道行く女子のスカートをめくり
悪評を振り撒くシーンは
本当に楽しそうに演じている。
和製ジャックニコルソンとでも言わしめる表情をする。
パンツをかぶりエクスタシーを感じている安田顕は
冗談じゃないくらい変態だ。
変態仮面をギリギリまで追いつめる
最強の変態を演じるのは彼しかいないだろう。


敵のボス、大金玉男(おおがねたまお)役にはムロツヨシ。
好き嫌いのはっきりする個性的な演技をする彼だが、
物語が進むにつれて彼の独特な雰囲気がどんどん好きになっていった。


一番の見所はと聞かれれば、
このニセ変態仮面と対峙するシーン。
街での死闘(このシーンもめちゃくちゃ面白い)で
ニセ変態仮面は変態仮面を拮抗縛りにして追いつめる。
だが、せっかくのチャンスにニセ変態仮面は、
なんと自分を拮抗縛りにして、
自ら「放置プレイ」を始める。
チャンスを前に何も出来ない自分という状況に
エクスタシーをビンビンに感じたニセ変態仮面は
どこかへ走り去る。

彼が向かった先は、煌煌とヘリポートマークが光るビルの屋上。
(ハリウッド映画でヒーローが悪党を追いつめるときとか、
よく出てくるような場所)
変態仮面が追いついたときには、
屋上の真ん中に縛られたまま横たわるニセ変態仮面はこう言い放つ。

「なにしにきた!放置は一人でいるとさらにエクスタシーなのに!」

ここから戦闘シーンが少しあり、
再び変態仮面を追いつめるニセ変態仮面。
ここから壮大なBGMとともに、
ニセ変態仮面による「変態についての説法」が始まる。
パンツをかぶり縛られながら語る迫真の演説が、
まぎれもなく映画史に残る名シーンだといえる。

ここでは語り尽くせないしょうもなさと感動がある。
この映画には名言が数多く登場するが、
その中からひとつ抜粋して最後に叫ぼう!


「おぼえておけ。21世紀の現代、『変態』こそ『正義』であることを!」



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